学生反抗記ネオ

元京大院生の諸行無常。

落語の世界にみるタテカン運動

 京大のタテカン運動をこれまで見てきて,その変遷をたどっていくと,とある落語の演目と重なる。「禁酒番屋」という噺だ。上方では「禁酒関所」という名前で演られている。禁酒番屋のあらすじはこうだ。

 

 家臣の余りの酒癖の悪さに業を煮やした主君が家中に禁酒のお触れを出すことになった。けれど酒好きの藩士一同は大慌て。中でも酒豪の近藤という侍は,城下の酒屋になんとかして自分のもとへ酒を持ってくるように厳命する。持ってこなければ切り捨てるというのだ。しかし困った酒屋さん。城内へ酒を持っていくには禁酒番屋を通らなければならない。禁酒のお触れが出ているようではこの番屋を切り抜けることはできないと悟った酒屋の亭主,どうしようかと考えていると店の者が「鳩に一升徳利をぶら下げて飛ばそう」とバカなことをいう。それじゃだめだと言うと「そしたら,鳩に一升飲ませて,,,」と埒があかない。ならばこうしようとカステラの箱を持ってくると,中に徳利をしのばせ水引を付け,ご進物用として菓子屋の格好で番屋へ向かった。番屋の侍,主君の命とあって中身を確認しようとする。

酒屋「いや,これはカステラでございまして,,,」

侍「分かっておる!,,,おや,水引がかかっておるな。。」

酒屋「ご進物で御座います」

侍「あ,なるほど,ご進物であるか。それならば通ってよい。持ってまいれ!」

酒屋「ありがとうございます!,,,,どっこいしょ,,」

侍「,,,待て!今なんと申した?その箱を置け!」

あれよあれよと箱を開けると中には五合徳利が2本。酒屋は水カステラなどと言い訳をするがもう通じない。

侍「中身を吟味いたす!湯呑を持ってこい!」

お付きの者に湯呑を持ってこさせた侍,中身を吟味するといって酒を全部飲み干してしまった。

侍「いつわりものめが!」

酒屋に戻った店の者,中身を飲まれてしまったとカステラの箱に入れる案は失敗だ。次はどうしようかとあれこれ工夫をして番屋へもっていくのだが。。。

 

 この後の続きはユーチューブなどで実際に聞いてほしい。私は立川志の輔の演じているものが一番好きだが,まさにこの「禁酒番屋」は近藤という侍に酒を持っていこうとする酒屋と,主君の命を受けて城内の禁酒を徹底する番屋のせめぎ合いが滑稽な噺として描かれており,当局とタテカン攻防を繰り広げる京大生の姿に通じるものがあるのだ。酒屋の工夫のしどころも,タテカン攻防のイタチごっこの様相を呈しており,ユーモアに走る京大生の精神が,「禁酒番屋」という演目全体に広がる滑稽さとリンクする。京大生がこの噺を聴けば実に面白く感じることだろう。

 落語を初めて聴く人は,一度だけでは噺の筋書きが頭に入ってこないかもしれない。ぜひ二度三度と聴き直してみてほしい。聴けば聴くほど面白さが分かるはずだ。それにしても,タテカンの意義さえ吟味しない京大当局の態度は京大生からすれば滑稽噺にもならない犬も喰らわぬ話である。